院長ブログ
母とアデランス
母は2年前に他界しました。昭和一桁生まれの母は、教育者だったのですが、定年のほんの数年前に何を思ったか退職してしまい、その後はパーキンソンを10年ほど病んでいました。
そんな母は、他界するほんの数年前に、訪問販売のアデランスでカツラを作っていました。
それを見た子どもたちは、
「なんで、いまさらそんなもの作るの?」
「いったいいくらするの?」
「訪問販売にだまされたんじゃないの? そういうのがいっぱい来るからね。」
なんて言ってました。
たしかに結構な値段で、聞いてみたらみんなびっくりでしたが、そういうものなんだそうですね。私はその時まで知りませんでした。
でも、後になってなぜ、母がそういう行動を取ったのかわかりました。
いつまでも綺麗でいたかったんだな、と。いくつになっても、きれいでいたいんですね。
まわりからみればお婆ちゃんでも、心はどこか置いてきたまま、若い頃の思い出をいつまでも引きずりながら・・・なんですね。
そういうのが主題だったのが、映画「タイタニック」のおばあちゃん、なんですね。
当院でも、高い入れ歯や差し歯を入れようとするお婆ちゃんは時々います。
そういうのをやると、私に対して冷ややかな感情を持たれるご家族もたまに、いらっしゃいます。
また、これを指して「墓場の乞食」と歯科医師を揶揄したのは日本医師会の武見太郎でした。
この問題については、私は複雑だと思いますので、何も語ることはありません。ご当人の思いもあるでしょうし、ご家族の思いもあるでしょう。
ただ、綺麗な口もとに・・・という思いは、いくつになってもあるんだなあ・・・と。
そういう女心というのを、私も少しは判るようになってきた今日この頃、というお話でした。