今日、クローズアップ現代をみていたら、日本の平均寿命は大変長いのに、ある年齢だけ、先進国中突出して死亡率が高いことが判ったそうです。それが1才から4才なのだそうです。
子供の治療は特殊な所があり、急に頭を動かすとか、手を出す、口を水でいっぱいにしてしまうとか危険なことがいっぱいあります。だから日本では拘束器具や開口器をつかい、外国では全身麻酔を多用するのでしょう。
私は自分の子供には、どちらもやられたくはありません。ですから虫歯を予防します。方法は、大規模な統計が取られており、学術的には確立しています。
1, 家庭でのフッ素指導、食事指導、等によって、口腔健康のリテラシーを向上させること。
2, 定期管理でフッ素を塗りプロに磨いてもらう。
これらで60%以上の予防効果が実験的に判っています。「家庭で磨いている」だけでは予防効果はひくく、歯磨き粉を付けない場合は、虫歯予防効果はほとんどありません。
家庭においても歯科医院においても、口を子供は開けてくれないこともしばしばあります。これを解決するために
「歯科リトミック」
を保育士がやっています。簡単ではありませんが、成果が出ています。
きょうは、お二人の成人女性の患者さんが同じことを言ってました。
「子供の頃の治療がトラウマになっていて、ともかく歯科治療が恐くて。」
お一人は開口器で口を開けさせられた、もう一人は拘束器具で体を縛り付けられて治療した。
小児歯科の先生はこれをやる場合があるようです。責めるわけではありません。他に方法がない場合もあるはずですから。
しかし、これは自分の身に置き換えてみたら、まさしく拷問ですよね。子供だって私たち大人と同じ「恐怖」の感情を共有しています。「人間として尊重されたい」プライドは私たちより強いくらいかも知れません。
だから、 子供には絶対に痛い思いをさせないために、自尊心を踏みにじらないために、
「乳歯からの定期管理予防」
なんです。統計によると、2才から5才にかけて、乳歯の虫歯は増え続けます。5才では50%近い子供が乳歯虫歯を持っています。その中の何人かは、やはり歯科で痛い思い、つらい思いをすることになり、なんらかのトラウマを歯科に対して持つことになるのでしょう。
そう考えると私たちの 「乳歯からの定期管理予防」は、ほんとうに意義のあるものだと思っています。
その人の一生についてまわるトラウマを無いようにできるかどうかにかかわっているわけですから。
子供の虫歯はかわいそうなものです。自分の子供が泣き叫んでいるのを他の大人に押さえつけられて痛い思いをするようなことはみたいものではありません。
私たちが 「おおつきっずデンタルランド」 という定期管理型小児予防歯科を作ったのは、丁度1年前、浜松と富山で同じようなコンセプトの歯医者を見学したからでした。うちのスタッフは異口同音に 「自分の子供だったら、絶体こういう所に連れてきたいです。ですから院長、こういうところを作りましょう。首都圏で最初に作りましょう!」 と言いました。
私もそれは賛成でしたが、私の専門は歯周病(インプラントはその一部)、それに関連して咬合・補綴・矯正などです。小児は苦手ではありませんし昔はたくさん見ていましたが、最近は大人ばかりになっていたものですから、かなり戸惑いました。
最も問題だったのは,「小児の予防はどうすれば良いのか?」という純粋に学術的な疑問でした。これに関する回答は、残念ながら日本のものよりも海外の文献の方がよく答えてくれました。なかでも [ Early Childhood Oral health ] という本は素晴らしく、子供の虫歯をどうすれば効率的に正しく予防できるかが書いてあったため、当院の教科書として英文でしたが全員で読むことにしました。
欧米では小児を押さえつけて歯を削るという記述はありません。ほとんどあり得ないようです。その代わり全身麻酔でするようです。
しかしそれ以上に 「定期管理予防」の重要性を半分以上のページを割いて述べていました。なぜならば、子供の治療というものは "paramountly difficult " (=大山のごとく子供の治療は困難である)とありました。また、 ショッキングなことではありますが、家庭でのブラッシングよりも 「定期管理予防」の方が圧倒的に(97%)予防効果が高いという統計が、またそれと同じような統計結果がたくさん出てきました。方法はこれしかないようです。
つまり数ヶ月おきに必ず通い続けてもらって、しかし絶体に歯は削らず、削りたいという誘惑には医者は耐えて、PMTCとフッ素塗布ということを、歯科医院で永久歯になるまで続けるということなのです。
なぜ日本では子供に対して定期管理予防があまり行われていないのでしょうか? 答えは簡単で、しかし残念なことですが、「保険点数が極めて低く、経営的に成り立ち得ない」ということなのです。しかし・・・・これは私自身子供を持つ親としては納得できません。この辺は小児科の不採算性と同じ構造です。医科では大きな病院の中で不採算でも小児科を存続させられても歯科は小規模診療所だらけなので不採算部門はできないのです。
正直に申し上げます。当院も 「おおつきっずデンタルランド」 は大変な赤字部門です。それでもスタッフも私も 「自分の子供を通わせたい」 と思う診療室を作り、いまも続けています。
もう一つ正直に申し上げます。この不採算を解消する方法は一つしかないのです。それは
「大量に子供達に来てもらってなんとか低い保険点数でもやっていく」
ということです。もっともっと多くの子供達に来てもらわなければ・・・・・

蛇足ですが、実はもう一つこれを成り立たせる方法があります。それは高い金額を保護者からもらうという方法です。しかしこれでは当院の 「虫歯のない子供を大量につくり、虫歯のない大人を作り、虫歯のない社会を作る 」 という理念に反し、一部の子供しか診られなくなります。
この選択肢をとることは避けたいと思っています。なぜならば子供には親の経済力によって差別されるような罪はないからです。大人の治療以上に子供に対しては公益性の高い社会的使命があると考えています。
ですから今後も当院は出来るだけ安く子供の定期管理予防をするつもりです。今よりもずっと多くの患者さんに来てもらって、楽しい思いを子供達にさせて必ず虫歯の予防をします。

これは学術的に確立された手法を用いれば可能だと言うことがわかっているのです。
これを読んでいる皆様方のご協力を切にお願い致します。
医療法人満月会 理事長 大月晃